Young, Alive, in Movie

若者は映画に生きる

【映画感想】凪待ち (ネタバレ無し)

凪待ち

 

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監督:白石和彌
脚本:加藤正人

製作総指揮:木下直哉
プロデューサー:椎井友紀子、赤城聡

出演:香取慎吾 恒松祐里 西田尚美 吉澤健 音尾琢真 リリー・フランキー

 

【個人的評価】90点

 

 

いや〜よかった!すっごく良かった!

脚本 映像 演技全てが高レベルの傑作だった!

これは色んな人に観てもらいたい映画ですよ!

 

 

【あらすじ】

基本的なあらすじとしては「人生につまずいた木野本郁夫(香取慎吾)は、ギャンブルから足を洗い恋人・亜弓(西田尚美)と彼女の娘・美波(常末祐里)と共に、末期ガンに冒されながらも漁師を続ける亜弓の父・勝美(吉澤健)のいる石巻に移り住むが・・・」といった感じ

 

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人生を無為にすごしていたギャンブル依存症の男、郁男が

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恋人とその娘と共に震災の爪痕残る石巻に移住する・・・というストーリー

 

これだけ見るとなんというか田舎に帰る癒し映画に見えなくも無いですがこの後、話はどんどん悪い方向に転がっていくのです・・・(ネタバレになるのであまり言いませんが)

 

【感想】


まず何と言っても脚本が異常に素晴らしい

多い登場人物を持て余す事なくさまざまな人生が波のように影響を与え合ってるのが良いし、その上どこに着地するか分からず常に先が気になる展開や全体を流れる厭な雰囲気そしてところどころガツーンとくる衝撃に最後まで心が揺さぶられっぱなしでした・・・

ちょっとしたセリフの回収なんかも巧くてね・・・いまいち家族として認められないところのあった主人公が家族として認められるという事を本当にさり気ないセリフで分かるようになってて・・・(涙)

この映画は主人公の喪失と再生を描いてるのですが、それを舞台である石巻の状況と重ね合わせてるのかなぁとも思いました

 

 

 

画づくりも素晴らしく、先ほど述べた作品全体に流れるこの先どうなるのかわからない厭な雰囲気っていうのが脚本だけじゃなく画からもすごく感じられるようになってて、ギャンブル依存症である主人公がついギャンブルへと心が傾いてしまうときにカメラもググーっと傾いてしまう感じとか荒々しさを感じる長回しとか巧いなあと

台詞じゃなくて画で語るような映画だったのも好印象ですね

 

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心の傾きをカメラの動きで表現、こういう照明が暗めな画が多く本編はかなり重い

 

 

 

そして香取慎吾さんをはじめとする役者陣の素晴らしさ・・・

香取慎吾さん演じる主人公はまあクズもクズのギャンブル依存症で本当に大切なお金を全部ギャンブルで溶かしちゃうような男なのです・・・

ストーリーだけ見るとなんでみんなこんなクズを見捨てないの?とか思っちゃう危うさがあるんだけど、香取慎吾さんが持つ人間的魅力とかそういう部分がその危うさをうまいことカバーして違和感を無くしてて、「大丈夫だよやればできるって!お前が本当はいい奴なの知ってっから!」っていう気持ちに自然となっちゃうんだよね

香取慎吾さん以外がこの役やってもここまで感情移入出来たか分からないってくらい適役でしたね、正直言って今まで変な役ばっか演じてるイメージだったのですがw(例:◯ち亀、◯ットリくんなど)今作で180度認識がひっくり返りました「こんな役も出来るんだ!」と

この映画の登場人物は善悪二元論では語れない人たちが多くて、そんな二面性のある人物をみんな上手く演じててとても素晴らしかったです

 

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もちろん香取慎吾さん以外も良い役者揃いだったよ

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リリーフランキーさんも安定の良さ、いつもはなんかうさんくさい役が多いけど今回はかなり感動させてくれるシーンがある

 

 

「凪」とは風が止んで波がなくなっている状態を意味する言葉です

この『凪待ち』では作中、2011年の震災の影響を思わせる描写が多く出てきます

悲惨な津波による影響、つまり波はまだ止んでない

この『凪待ち』はそんな波が止む事を待つ人々の物語だと僕は思います

 

 

【総評】
例えどん底に落ちてもやり直すこと立ち直ることは出来るというメッセージ、震災への復興というものを安易に絆や希望などに落とし込まず、とても暗くとても重くしかしそれでいて確実にそう感じられるように描いている、そんな映画でした